夢で逢いましょう

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 あなたの目は青い。でも、サファイアでもましてラピスラズリのようにでもなく、もっと淡い青、透明な青。
 たとえばアクアマリンの青、サンタ・マリア産のベリルのような青?
 きっと、もっと。
 それなら浅瀬を流れる水の、板ガラスの切口のあの青?
 たぶんそう。でも違うのかもしれない。もしかすると色はあなたの目のものではない。あれはほんとうは前からうしろへと貫通している二つの穴で、かき分けて探せば、淡い金の色に漂白された髪の茂みの蔭に潜んでいるのかもしれない、穴の裏側が。 
 茂りに茂る葦の葉の蔭に身を潜めている底無しの沼の入口のように、どこかに。
 だから、たぶん、あれは空の色の青(もしかすると宇宙の空間だとか、そんなものの色の青)。
 だから、今のところは、降り続けた雨のあとでようやくのぞいた空の少し冷たく見える青、板ガラスの切口の──というのはもちろんこの季節のこの国の話で、初めて見たあのときにはもっとずっと鮮やかで濃い青だった。
 憶えている? ゴヤのあの絵を。聾者の家の黒い十四枚の絵の一つの、たしか、『棍棒での殴り合い』とかそんなような題の。
 膝の下までが土にうずもれた二人の男、うずもれたままで、振りかざした棍棒で殴り合う巨大な男たちの向こうには岩山と荒れ地と雲と空しか見えない。
 映画館の片隅で私が昔見たものは、そう、光り輝くあの雲の二箇所の裂け目からのぞいた空に似た青。暑くて乾いた土地の、サラゴサの、テキサスの南の端の、あるいはチワワとかいったところの上にだけ広がる空のそんな青だった。
 鮮やかで濃くて、泥絵具の浅葱の色に似た。
 あなたの血の赤もやはり泥絵具の紅色に似て、よく空の青に映えて、美しかった。そう、ちょうど、ゴヤの絵のように。


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